カビの毒
食中毒を起こす微生物といえば、従来は細菌がほとんどで、ブドウ球菌、サルモネラ菌、ボトリヌス菌、腸炎ビブリオ菌などによる食中毒が主力でした。
最近では、カビが菌体内でつくり出す代謝産物の中に、人間や動物に有害な生理作用を及ぼすものがあり、それが原因となって起こる食中毒が増えています。
以前で述べたように、ライ麦を常食しているヨーロッパでしばしば発生した麦角中毒があります。
アカカビ病でできる毒は、増殖細胞に障害を起こし、放射線障害とよく似た症状を起こす毒性があって、とりわけ造血器官に著しい障害を与えることもわかってきました。
アカカビによる中毒症状は、ヨーロッパ、カナダ、イギリスで飼料中毒症が発生しています。
カビによってつくられる毒性物質をカビ毒、あるいはマイコトキシンと呼びます。
マイコトキシンは、カビの細胞内で非常に能率よく化学合成される活性成分(有機物)で、たとえば酵素のように、化学反応を促進する触媒と同じ働きをして中毒を引き起こすのです。
マイコトキシンには、かなり多くの種類があり、毒性と毒の強さも千差万別です。
毒素の種類によっては化学薬品の毒物(たとえば、ヒ素やシアンソーダ)よりも強い毒性を持つものもたくさんあります。
高熱や酸とアルカリに対して安定した性質を持っていて、加熱や酸、アルカリなどの処理によっても分解、消滅しないのがやっかいです。
このため、生物兵器として研究されているマイコトキシンもあります。
マイコトキシンによる中毒は、肝臓や腎臓、中枢神経、造血機能などに障害を与えるので、その症状も多様です。
この点が、急性胃腸炎が中心の細菌性食中毒と異なります。
アフラトキシンやステリグマトシスチンなどのように発ガン性を持つ毒素もあります。
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