濾過-10万分の50ミリ以下の目でないと効果がない
ミネラルウオーターにカビが混入する事故が続発したのは一九九五年のことですが、ミネラルウオーター以外の清涼飲料水やジュース、コーヒー、乳酸菌飲料、ポタージュなどにカビが混じっていることもあります。
名古屋市衛生研究所が消費者から苦情のあった飲料について調べたところ、クロカビ(クラドスポリウム)、クロコウジカビ(アスペルギルス・ニガー)、アオカビ(ペニシリウム)、フォーマ、ツチアオカビ(トリコデルマ)、アカカビ(フザリウム)など多様なカビが検出されました。
液体にカビが混入しないようにするには、濾過器を使います。
とくに、液体に溶けている物質が加熱で分解しやすい場合や、加熱によって色調や風味に変化が起こる場合は、特殊なフィルタを用いて濾過して、物理的に微生物を取り除きます。
最も簡便なフィルタ(濾過器)としては濾紙がありますが、もちろん、目が粗いのでこれで微生物を捕捉することはできません。
古典的なフィルタには、陶土製のシャンベーラン・フィルタ、ケイソウ土製のベルケフィルド・フィルタ、石綿製のザイツ・フィルタなどがあり、いずれも飲料水の無菌化に広く使われました。
これらのフィルタは、液の処理に非常に時間がかかるのが大きな欠点です。
たとえば、一リットルのJP4(航空燃料)をザイツ・フィルタで無菌化するのに約五〇分もかかり、これではとても実用になりません。
最近普及しているミリポア・フィルタ(ミリポア社製のフィルタ)を使うと、一リットルのJP4をわずか七分で完全に無菌化でき、非常に能率よく濾過できます。
このフィルタの素材は、セルローズ・エステルというアセテート繊維です。
軍事目的で開発されたフィルタミリポア・フィルタのように、超薄の膜を素材とするフィルタをメンブラン・フィルタと総称します。
メンブランは「膜」のことで、ガラス繊維、ナイロン、ポリカーボネート、テフロンなども素材として使われます。
主流になっているのは、アセテート繊維のフィルタです。
ミリポア・フィルタの目(ポアサイズ)は〇・二二ミクロン(一〇万分の二二ミリ)です。
微生物の最小は〇・五ミクロン(一〇万分の五〇ミリ) なので、このフィルタで濾過すると、目にひっかかって通過しません。
フィルタの素材はきわめて多くの孔が空いていて(多孔性)全体の面積の約八〇%が孔で、材料本体はわずか二〇%に過ぎません。
濾過する材料によって変質すると使えないので、水、弱酸、弱アルカリに侵されない性質を持っています。
高い耐熱性があるので、一二〇℃の高熱殺菌をして使用します。
メンブラン・フィルタは、ワイン、ビール、コーラなどを大量に処理する濾過装置に便われ、一時間に二〜三トンもの量が処理可能です。
製薬など化学工業における分野、公衆衛生の分野、病院など医学分野などで、除菌を目的として広く活用されています。
余談になりますが、メンブラン・フィルタは、軍事目的で開発されました。
戦場で兵士たちの飲料水を確保するため、河や沼の水を濾過する装置が求められたのです。
装置は次第に小型軽量化されていき、ついにはストロー状のものが開発されました。
ストロー部分の中間にフィルタがあり、そこで液中の細菌とカビを濾過除去します。
この開発ビジネスは、第二次世界大戦のとき、軍用の需要で大きく発展しました。
戦後、この技術が民需に活用されました。
たとえば、コカコーラは、製造時に砂糖を加えるとき、野性の酵母が混入することがありました。
そのままビン詰にして中でアルコール発酵が進み、コーラを飲んだ子供たちが酔うというトラブルが起こったため、それを防ぐ目的で 全品をメンブラン・フィルタで処理し、完全に無菌のコーラができるようになったのです。
その後、メンブラン・フィルタは他の清涼飲料やビールなどの処理にも使われるようになっています。
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