マンションの落とし穴
今日の多くの住宅では、こうした先人の教えがまったく活かされていません。
鉄筋コンクリートと金属枠のガラス戸という、雨の少ない欧米に適した建築方式が、日本にも適していると考える建築家の不勉強のせいでマンションが乱立し、入居している人がカビの被害を受けているのです。
住まいのカビ被害が目立ち始めたのは、一九七〇年ごろ、大都市で木造の家を壊し、コンクリート造のマンションが増えて以来のことです。
マンションのほうが木造住宅より耐久力があり地震や火災に強いと宣伝され、窓が大きく明るくモダンな感覚にあふれていることもあって、多くの人がマンションに憧れました。
ここに落とし穴があったのです。
1970年頃、住宅公団が二年がかりで建てた大規模な集合住宅がカビの被害を受けました。
最後の仕上げの段階で、室内に壁紙を貼り、さらに塗装で美しくできあがったのですが、すぐに塗装した壁面と塩ビの壁紙の表面一面に大量のカビが生えて、強いカビ臭を放つようになったのです。
そのころ、塗装と内装の職人にはカビの知識がまったくなく、なぜカビが生えるかを正しく理解していない時代でした。
工事責任者が、
「プラスチックにはカビが生えるわけがない。
塗装の工事を一〇年以上続けているが、こんなにひどくカビが生えたのは初めての経験だ」
と言うのです。
同じころ、千葉県船橋市の公団住宅のカビ被害を調べたこともあります。
住人が10月に入居し、早くも12月にはカビにやられました。
秋口で気温が低下することによってできた結露のせいで壁がよく乾かないことが原因だと考えられます。
北西の冷たい風が当たる壁面が、最も激しくカビに侵されていました。
1980年に、私の友人が建てたマンションが完成したというので見学に行ったところ、北側の壁が冷えて激しい結露を起こし、カビが厚さ二センチも木の皮のようにこびりついて生えていました。
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