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壁紙・塗料とカビ
日本の今日の住まいで、ひどくカビが生えるのは壁紙 (紙ではなくポリ塩化ビニール製)や塗料です。
塩化ビニールのシートに60%も配合される可塑剤などはカビの好物ですし、塗料の成分もすべてカビの大好物です。
乾燥している気候が一年中続くヨーロッパやアメリカでは塗装面にもプラスチックにもカビは生えませんが、日本の風土のように雨が多く湿気の多い所ではカビの被害が出るのです。
しかも、アルミサッシとコンクリート道の住宅は密閉性が高く、場所によって結露が起こります。
その湿気のせいで、カビが旺盛に発育するのです。
少し古いデータですが、1985年の住宅公団の居住者調査によれば、賃貸住宅の約五〇%、分譲住宅の五六%の人が、結露・カビについて「やや悪い・悪い」と答えています。
結露やかびの被害が多いことをうかがわせる結果です。
湿度の高い日本の新常識コンクリート造の建物については、耐久性の面でも誤解があるようです。
木造の家は地震や火災に弱いが、コンクリートの家は実に頑丈で耐久力に優れているというのが一般常識になっています。
ところが実際には、雨が多く湿度の高い日本では、この常識はまったく逆になっています。
日本の代表的な鉄筋コンクリート建てビル、丸の内ビルディング(丸ビル)は、わずか七四年で老朽化が進み、取り壊して2002年に新しく建設されました。
一方、奈良の法隆寺や京都の御所のような古い木造建築ははるかに耐久力が優れ、長寿命です。
新潟県、富山県、石川県のように雨の多い地域でも、120〜150年の歳月に耐え、昔通りに使われている木造民家はたくさんあります。
雨が多くても、木は湿気を吸収し、いったん水に濡れても好天になると乾くので寿命が長いのです。
ドイツ・ライプチヒ市の中央駅の前の五階建ての石の家は八〇〇年の風雪に耐え、まだ人が暮らしています。
あと300年は使えるといいますから、寿命は半永久的です。
これに対して、日本では高級なマンションの寿命は40年くらいなのです。
カテゴリー:住まいにおけるカビ被害
マンションの落とし穴
今日の多くの住宅では、こうした先人の教えがまったく活かされていません。
鉄筋コンクリートと金属枠のガラス戸という、雨の少ない欧米に適した建築方式が、日本にも適していると考える建築家の不勉強のせいでマンションが乱立し、入居している人がカビの被害を受けているのです。
住まいのカビ被害が目立ち始めたのは、一九七〇年ごろ、大都市で木造の家を壊し、コンクリート造のマンションが増えて以来のことです。
マンションのほうが木造住宅より耐久力があり地震や火災に強いと宣伝され、窓が大きく明るくモダンな感覚にあふれていることもあって、多くの人がマンションに憧れました。
ここに落とし穴があったのです。
1970年頃、住宅公団が二年がかりで建てた大規模な集合住宅がカビの被害を受けました。
最後の仕上げの段階で、室内に壁紙を貼り、さらに塗装で美しくできあがったのですが、すぐに塗装した壁面と塩ビの壁紙の表面一面に大量のカビが生えて、強いカビ臭を放つようになったのです。
そのころ、塗装と内装の職人にはカビの知識がまったくなく、なぜカビが生えるかを正しく理解していない時代でした。
工事責任者が、
「プラスチックにはカビが生えるわけがない。
塗装の工事を一〇年以上続けているが、こんなにひどくカビが生えたのは初めての経験だ」
と言うのです。
同じころ、千葉県船橋市の公団住宅のカビ被害を調べたこともあります。
住人が10月に入居し、早くも12月にはカビにやられました。
秋口で気温が低下することによってできた結露のせいで壁がよく乾かないことが原因だと考えられます。
北西の冷たい風が当たる壁面が、最も激しくカビに侵されていました。
1980年に、私の友人が建てたマンションが完成したというので見学に行ったところ、北側の壁が冷えて激しい結露を起こし、カビが厚さ二センチも木の皮のようにこびりついて生えていました。
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住まいにおけるカビ被害〜音の木造住宅の智恵に学べ
今から50年以上前、日本人が木造の家に住んでいた時代には、住まいの中にカビが生えて困るということはまったくありませんでした。
田舎の100年以上古い木造の家は、天井が今の家よりはるかに高く、床の下は高さが六〇センチ以上、
家によっては一メートルもあって、床下で子どもたちが遊べるほどの空間がありました。
天井の杉板の上には梁が並び、その上を立って歩ける高さの空間があって、その上部が屋根になっていました。
床下も天井も空気がよく流れるので、湿気は家の中に溜まりません。
土の壁は、雨が降って部屋の中が湿ると速やかに水分を吸収しますが、好天の日はその水分を外気に放出して乾きます。
畳も部屋の湿気を吸い、床下の空間へ放出します。
床板はわざとすき間をあけて張ってあり、水分が速やかに床下へ移るように工夫された構造になっています。
このような木造住宅の構造は、数百年来の多くの失敗と経験から生まれた貴重な文化遺産といえるものだと思います。
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