人の命をねらうカビ
比較的よく知られているのが、肺の内部にカビが侵入して増殖する病気です。
これまでの検査では、コウジカビ(アスペルギルス)とケカビ(ムコール)が多いことがわかっています。
カンディダというカビが原因となることもあります。
増殖が激しいと生命が脅かされます。
クリプトコッカス・ネオフォルマンスというカビが脳の中で増殖し、中枢神経が侵される脳クリプトコッカス症という病気は、八〇%の患者は一年以内に、多くは二〜三ヶ月で死亡する恐ろしい病気です。
よく知られているのは、ひどい耳鳴りに悩まされて東大病院に入院した一三歳の男の子の症例です。
医師は脳の中に腫瘍ができたと判断し、その治療を始めました。
ところが病状は悪化するばかりで、耳鳴りに加えて、ものを吐くようになり、うなじが硬化し、ものが二重に見えると言いだし、入院して15日目に短い一生を終わりました。
解剖の結果、脳の中はカビで詰まり、軽石のようにポッポッと穴があいていて、その中には白い半透明のねぼった寒天のようなものが詰まっていました。
くわしい調査の結果、これがクリプトコツカス・ネオフォルマンスというカビであることが判明したのです。
一九五八年からの10年間に日本で解剖した遺体のうち、原因がクリプトコッカス症とわかったものが253例と報告されています。
さらに調査が進むにつれて、クリプトコッカス症は増える、というのが病理学者の結論になっています。
このカビは、ハトやツグミのフンの中に非常に多く発見されます。
フンが乾燥するとカビは空気中を浮遊して、呼吸とともに肺の中に入り、肺クリプトコッカス症になります。
その後、このカビは少しずつ血液の中に流れ込み、脳へ移動して増殖する性質を持っています。
体力が衰えていると急速にカビが増えるので、今日でも的確な治療法がないうえ、治療経験のある医師が少ないことはまことに心細く心配です。
黒色分芽菌も、人の命をねらう恐ろしいカビです。
一〇歳の少年が結核性リンパ節炎と診断され、抗生物質で治療をしたところが病状は悪化して、しだいに意識が薄れていき、入院一年半で死亡しました。
解剖してみると、黒色分芽菌というカビが体内のいたるところに増殖し、リンパ節が腫れあがっていました。
脳の中までカビがはびこったことが死因とわかりました。
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