一流会社・工場でも内情は…
微生物の作用を合理的に活用して加工食品を製造している工場では、その微生物が容器や製造装置、周囲の壁や床に付着している場合があります。
これは不潔ということではなく、微生物があちこちに付着しているせいで、むしろ安全に製品を製造できるということがあります。
たとえばカツオブシをつくるとき、カツオにカビ付けをする箱の中にはカツオブシを熟成させるカツオブシカビが充満しています。
これが好都合なのです。
チーズの熟成、ワインの製造工程、清酒の発酵工程などでは、周囲に付着している微生物に守られてよい製品ができるという面があります。
「汚い店はうまいものを食べさせる」か?
これと正反対のケースもあります。
清掃の不徹底、カビ対策の不備などで、工場をカビだらけにしている例です。
ケーキ、カステラ、パン、もち、うどん、かまぼこ、ハム、ソーセージなどの一流メーカーでも、工場の内部を見ると、これが一流会社なのかと疑うくらい、天井や壁面に激しくカビが繁殖しています。
一度見たら、その会社の製品は絶対に買う気持ちがしなくなるほどひどい状況です。
私は、そういう工場をいくつも見てきました。
有名な大会社だからといって、すべてが清潔な作業をしているとは限りません。
関西で、「汚い店はうまいものを食べさせる」と言うことがあります。
しかし、食物を扱うところは材料が周囲に飛散して汚れ、その部分にカビが生えやすく、不潔にもなります。
店が汚いのは、担当者が不注意でズサンな作業をしている証拠で食中毒を起こす危険性が高いと言えるのではないでしょうか。
店の品がうまいかどうかは、また別の話です。
山形市内で50間続いているもちの製造工場を視察したことがあります。
1980年ごろのことです。
上質の材料をよく選んで製造しているという説明でしたが、
もちをつく大きな機械からは一日中、水蒸気が立ち上って天井を濡らすため、その部分の周囲2〜3メートルにわたって色が変わるほどカビが繁殖していました。
塗装業者に防カビ施工を繰り返しやってもらっても、2〜3ヶ月経つと、またカビの勢力が強まってしまうそうです。
そのころ、食べやすい大きさに切った切りもちを袋詰めにした製品が増え、流通の途中で、袋の中のもちにカビが生えて返品になるケースも増えていました。
私は、製品に生えるカビは製造工程から袋の中に侵入するのだから、その元を断つ工夫が大切なことを教えました。
広い作業所の壁面は洗剤でカビを洗い流して乾燥させ、TBZという防カビ剤を〇・五%配合した塗料を二回塗りました。
熱いもちをなるべく早く固めるために、ステンレスの容器に流し込んで4℃の冷蔵庫で冷やしていましたが、広い冷蔵室内にもカビが検出されたので同じ塗料で塗装しました。
さらに、もちをカッターで切って袋に詰める工程も問題だったので、クリーンルームを設置し、高性能のフィルタで無菌空気を送り、作業をすべて機械操作に切りかえました。
さらに、道具は毎日殺菌するように、袋も殺菌して使うように指導しました。
それから三年後に、山形市内での講演の折り、この会社の社長に会い、社長の勧めで工場を見学したところ、壁も床も新しく塗り直したかと思われるぐらい清浄で、冷蔵室と包装室は完全クリーンルームになっていました。
私が指導したことが100%実行されていて、大変よい気分でした。
社長は、「今後は清潔でおいしくなければ売れません」と胸を張って誇らしく発言されました。
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